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会社設立に関するQ&A

従業員に関する疑問

 

従業員の給料と雇用形態はどう決めたらよいのか?

従業員の給料について

最低賃金の基準をクリアしているか確認しましょう。

最低賃金法という、法律で定められた最低賃金未満の金額で働くことを当人同士で同意したとしても無効です。

最低賃金法は、正社員、アルバイト・パート、契約社員、派遣社員の区別なく適用されます。外国人労働者でも、労働基準法の適用がある労働者であれば適用されますが、賞与や臨時の賃金(結婚手当等)や所定外給与(時間外勤務手当、休日出勤手当、深夜勤務手当)は対象外となっています。

最低賃金は地域別、産業別に定められていますので一度確認してみるといいと思います。地域別、産業別の両方が適用される場合は金額が高い方が採用されます。

会社設立間もない場合は、同一地域の同業他社の時給をハローワーク等で調査してみましょう。自社と同じくらいの規模の会社を10社ぐらいピックアップして比較検討してみて下さい。そしてまずは調査結果の最低時給とすることをお勧めします。

 

雇用形態について

まず大きく以下に分けられます。

種類 内容
正社員 契約期間の定めのない社員として、定年までの勤務が可能です。会社と直接雇用契約を結ぶ形です。会社から直接給料が支払われます。
契約社員 雇用契約書に雇用の期間が定められています。会社の種類、業態にもよりますが、雇用条件以外はスキル・待遇面で正社員とほぼ同等のところもあります。会社から直接給料が支払われます。
一般派遣社員 派遣会社と雇用契約を結び、派遣先の企業で仕事をします。即戦力となりうる専門的なスキルを持つスタッフが比較的多いです。会社は派遣会社に報酬を支払い、派遣会社が一般派遣社員に給料を支払います。
アルバイト・パート 正社員、契約社員と比べて、勤務日数、時間が短めの臨時雇用が主です。会社から直接給料が支払われます。

 

現在の業務量や内容と照らし合わせて、継続的に従業員が必要な場合は正社員、専門性が必要であるが期間限定でよいという場合は契約社員や一般派遣社員、1日数時間程度であればパート・アルバイトと検討してみるのも一つの考え方です。

資金の余裕度によりますが、会社設立間もない場合はパート・アルバイトが良いと思います。まだこのステージでは、売上を上げることも大事ですが、それと同じくらいまずは市場から退場させられないよう行動することが重要だからです。

また「雇用契約」とは別に、完全歩合給制など、出来高に対して成果を支払う「請負契約」もあります。請負契約は雇用契約ではないので、社会保険の加入対象になりません。

請負契約で様子をみるのもいいと思います。ただいつまでも請負契約のままでは、会社も相手も不安定なままなので、事業が軌道に乗り始めたら雇用契約に切り替えることを検討したほうがよいです。またそのような考えを持っているということを相手に伝えたほうがよいです。

 

給料の締日と支払日はどうしたらよいのか?

従業員が数名程度でしたら、給料の締日や給料日はそれほど気にしなくてもよいでしょう。しかし、最初からある程度の従業員がいる場合や、将来的には従業員が増えることが見込まれる場合は、後で後悔しないような締日と支払日を最初に設定しておくべきです。

キャッシュフローから考える場合

1日でも長く手元におカネが残るように考えましょう。そうすると大きなおカネの流れで考えて、取引先からの入金があり、仕入先への支払いを済ませた後に支給するのがよいです。

例えば毎月の締日が末日で、月末に入金、支払いが行われる場合、給与の支払いは月末以降に行います。

 

業務効率から考える場合

会社は業種にもよりますが、一般的には月末・月初は忙しいです。したがって、給与業務のように支払日をいつにするか調整可能なものは、初めから月末・月初以外に設定した方が効率的です。

例えば給与の締日を末尾にして、翌月10日支払いとすれば業務が集中することもありません。このため、目安としてですが、忙しい時期が終わる頃を締日として、支払日をそれから10日後くらいにするのが良いかなと思います。

ただ、将来規模が大きくなる予定であるならば、お勧めする締日と支払日は以下です。

  • 末締・翌月15日支払
  • 5日締・当月20日支払
  • 10日締・当月25日払

支給日をなるべく15日~25日に設定し、締日との間を15日間としているのは、以下の理由からです。

  • 15日~25日は比較的連続した祝祭日が少なく、金融機関の休業日は長くて3日連続です。このため支給日が所定の日より3日以上早くなることがありません。例えば25日が支給日として、当日が祝日だったとします。この場合22日(金)が支給日となりますが、この場合3日早く支給することになりますが、それ以上になることはないということです。
  • 振込での支給が一般的になっていますが、振込手数料が割安となる「給振(きゅうふり)」を利用するには支給日を除く2営業日前には振込手続を終えている必要があります(25日支給の場合22日まで)。支給日が休日等で前倒しになる月や、金融機関の営業日と会社の休日をも考慮に入れると、締日から支払日までの期間を10日間としていると、企業規模によってはかなり厳しいという月があります。

余談ですが、締日の翌月を支給日とする場合には、社会保険の関係で、締日をできるだけ末日に近づけたほうがよいです。例えば「20日締・翌月5日支給」と設定した場合、11月21日入社の従業員は初回の給料の支払いは1月5日となります。この場合、最初の給料で社会保険料を2か月分控除せざるを得ないのですが、従業員にとってそれは嬉しくないことだからです。

給与の支給日等は途中で変更することも可能ですが、就業規則を作っていた場合などはその変更手続き等に手間もコストもかかってしまいます。また従業員に与える印象も良くなく会社の信頼性も悪くなることはあってもよくなることはないでしょう。このため最初の段階で、自社にとっての最適な日をしっかりと考えて決めておきましょう。

 

会社を設立した場合、保険関係はどうするべきか?

検討しなければいけない保険は下記です。

  • 社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金保険)
  • 労働保険(労災保険、雇用保険)

 

社会保険について

加入が義務付けされている「強制適用事業所」というものと、任意で加入する「任意適用事業所」の2つがあります。

会社は「強制適用事業所」なので、社長一人の会社でも社会保険に加入する必要があります。また個人事業主でも従業員が5人以上いれば、一部の非適用業種を除いて「強制適用事業所」となります。

※非適用業種

農林水産、飲食業、宿泊業、娯楽業、職業紹介業、労働者派遣業、政治・経済・文化団体、サービス業

労働保険は従業員を対象にした保険のため、自分ひとりで会社設立した場合は、社会保険のみを考えればよいです。

社会保険には、「健康保険・介護保険(40歳から)・厚生年金保険」の3つがあります。

設立登記日が近くなったら、下記を準備しましょう。

  • 健康保険・厚生年金保険新規適用届
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届(被験者となる人全員分)
  • 健康保険被扶養者(異動)届(役員・従業員に扶養家族(配偶者、子供、父母等)がいる場合)

これらの書類を提出するときは下記の資料も必要に応じて一緒に提出します。

  • 登記簿謄本の原本
  • 賃貸借契約書等、会社の所在地が確認できるもの
  • 被扶養者の健康保険被保険者証
  • 扶養者の年間所得が103万円以上130万円未満の場合は「課税証明書」

これらは会社設立日から5日以内に会社所在地を管轄する年金事務所に届出を行う必要があります。会社設立日に法務局に登記簿謄本を取ったその帰り道、ついでに届出を行うというスケジュールにしておくとよいでしょう。無駄足にならないよう、事前に必要書類を年金事務所に電話で確認しておく方がよいです。

 

労働保険について

従業員がいる場合には労働保険の手続きも必要です。

労働保険には、「雇用保険・労災保険」の2つがあります。

雇用保険は会社がある地域を管轄するハローワーク、労災保険は労働基準監督署で届出をします。申請書はHPからダウンロードできます。

雇用保険で提出する書類は下記です。

  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届

労災保険で提出する書類は下記です。

  • 保険関係成立届
  • 労働保険概算保険料申告書

これらの書類を提出するときは下記の資料も必要に応じて一緒に提出します(要確認)。

  • 登記簿謄本
  • 賃金台帳
  • 労働者名簿
  • 出勤簿
  • 就業規則

札幌は第一合同庁舎に法務局と労働基準監督署がありますので、登記簿謄本を取ってそのまま労災保険の手続きをした方が効率的です。

「法務局」→「労働基準監督署」→「年金事務所」→「ハローワーク」というイメージで、その日一日を手続きに充てるほうが良いです。必要書類等については各役所に事前に電話をして準備しておきましょう。

 

社会保険の注意事項

法人の場合、社会保険料の半分を会社が負担する必要があります。

人件費という場合、従業員に支払う給料だけではなく、社会保険料の会社負担分も併せて考える必要があります。年間の経費計画を考える場合は、社会保険の支払いについて注意が必要です。

 

次回は、会社設立後、不要な税金を支払わないために抑えておくべき8つのポイントを紹介します。

 

利木貴志