Pocket
LinkedIn にシェア

会社設立後の節税にかかわる8つのポイント

 

1.青色申告のための届出書を出しましょう

会社を設立したら設立後3カ月以内に「青色申告の承認申請書」を所轄の税務署長に提出しましょう。

法人の青色申告の最大のメリットは、「欠損金の繰越控除」です。

欠損金とは赤字の事ですが、これを最大10年繰り越すことができ、まるで経費のように将来の利益と相殺することができます。

設立初年度は赤字になりやすいので、かなりのメリットです。

 

具体的に、1年目の決算は300万円赤字、2~4期は各100万円利益が出たとします。

この場合の税金はおよそ以下のようになります(中小法人で実効税率25%と考えた場合)

 

  • 青色申告の届出を出していない場合

1期目:0円 2~4期目25万円 合計75万円

  • 青色申告の届出を出している場合

1期目:0円 2~4期目0円 合計0円

 

この欠損金は発生した事業年度によって繰越期限が異なりますが、10年ぐらいと覚えておけばよいでしょう。

この他にも、青色申告のメリットとしては以下のようなものがありますが、「欠損金の繰越控除」と比較するとインパクトが小さいため説明は省略します。

  • 青色欠損金の繰り戻し還付
  • 特別償却・特別控除
  • 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
  • 推計課税の禁止、更生の理由付記

 

2.消費税の還付を受けましょう

課税売上高が1000万円以下の場合、その事業年度を含めて2年間は「原則」消費税の納税義務がありません。

しかし、設立初年度に設備投資などの大きな投資を予定している場合は、予定売上高よりも予定支出額の方が大きくなる場合があります。予定支出額とは、経費のみならず、資産計上された設備投資のための支出額を含みます。

経費

  • 商品や原材料の仕入
  • 販売費一般管理費の支払い(ただし人件費、保険、租税公課、減価償却費等は含まない)

設備投資

  • 社用車や備品、建物や機械などの購入費

このような場合、消費税を多く支払っていることとなるため、「消費税課税事業者選択届出書」を提出しておくと、消費税の還付が受けられます。

例えば売上高100万円、経費が300万円(人件費や保険や租税公課や減価償却費等は含まない)、カメラやビデオなどの機材購入で100万円あったとします。

この場合、消費税の申告を行うと22万円ほどの還付が見込まれます(下記計算例参考)。

{100万円‐(300万円+100万円)}×0.08÷1.08=222,222円

ただし、この書類を提出すると2年間免税事業者には戻れません。

このため2年目に大きく利益が出る場合などは、1年目の還付額を上回る、消費税の納付額が発生するので要注意です。

 

3.役員報酬は毎月同額にしましょう

役員に支払われる給与は「定期同額給与」と「退職金」以外は原則として損金になりません。夏冬のボーナスである賞与は、役員については原則として損金にならないということです。

例えば、毎月30万円の役員報酬をもらっている役員に対して、今年は売上が良かったからと言って12月にボーナス込みで100万円を支給すると、差額の70万円は法人税法上、損金扱いされないということです。

しかし所得税法上はきっちりと所得税の対象となって、多く税金を納めることとなります。

それならばそのまま法人の口座に置いておいた方が、余分な税金を納めなくてもよい分お得です。

このように今年は利益が出そうだからと考えて、思い付きで賞与を支給することには注意が必要です。ただし一つだけ例外があり、「事前確定届出給与」という制度を利用すれば役員への賞与も損金となります。

「事前確定届出給与」とは、事前に確定した給与の金額を税務署に届出すると、その届出書に記載した通りに臨時の報酬を支給すれば、その給与は経費として認められるという制度です。

この届出書は原則として、株主総会等でその旨を決議した日から1か月以内か、事業年度開始の日から4カ月以内のいずれか早い日です。

例えば3月決算で5/25が定時株主総会開催日とした場合6/25までに届出書を提出しなければなりません。

  • 株主総会から1か月を経過する日:6/25
  • 事業年度開始から4カ月を開始する日:7/31

ただし会社を設立した初年度の場合は、設立日から2か月以内が届出書の提出期限になるので注意が必要です。

 

4.消費税を正確に記載しましょう

契約書や領収書に消費税を区分した記載がありますが、このように区分するのは印紙税のためです。消費税区分を区分けして記載しないとその金額に丸々印紙税がかかってしまいます。

例えば「請負金額1,080万円(消費税込み)」とした場合、1,080万円に対し印紙税20,000円がかかりますが、「請負金額1,080万円うち消費税額等80万円」だと、1,000万円に対して消費税がかかるだけなので10,000円ですみます。

細かいことですが、記載の仕方によって印紙税の金額が変わるので、大きな金額の契約書や領収書を切る時は印紙税について一度チェックしてみましょう。

 

5.自動車税を節約しましょう

会社を設立して間もなく、社用車として新たに自動車を購入し、その自動車の付属品も併せて購入しようとする場合、節税を考えると一括で購入しないという方法があります。

自動車は購入時に取得税がかかるのですが、一括で購入すると付属品も含めたすべての金額に対して取得税がかかってくるからです。しかし、自動車を購入して取得税を支払い、その後追加で付属品を購入すると取得税はかかりません。

取得税率は2%~3%程度ですが、購入を考える場合は付属品の総額について一度チェックしてみましょう。

 

6.小規模企業共済に加入しましょう

小規模企業共済とは、小規模な法人の役員や個人事業主のための退職金となるよう、国が運営している共済制度です。民間の保険でもこの種類の保険はありますが、掛け金が「全額」所得控除となるところが大きな違いです。民間の保険は最大でも4万円程度です。

具体的には課税所得400万円ぐらいの事業主が、月2万円、年間で24万円積み立てた場合、民間保険を利用した場合の節税額は1万2千円程度ですが、小規模企業共済を利用した場合7万2千円となります。もし5万円、年間で60万円であれば、民間保険は1万2千円のままですが、小規模共済は18万円です。

加入した場合支払いをするのはあくまで役員個人なので、掛け金分をプラスして役員報酬額を支給します。プラス部分は、法人税では役員報酬として経費になっているのでメリットがあります。また受け取ったプラス部分は役員個人の所得が増えますが、同額所得控除されるので±0となります。もっとも社会保険が上がってしまうデメリットはありますが、それでも全体としてみれば節税につながることの方が多いです。

掛金額の上限が決まっていることや、大きくCM等の宣伝がされていないことからも、事業主有利の制度と言えるでしょう。

ただ、こうしたメリットが受けられない場合や、デメリットが先行する場合もありますので、加入する際は専門家に相談してから加入するようにしたほうがよいです。

平成29年から加入者の範囲が拡大された「個人型確定拠出年金(iDeCoイデコ)」もこれとかなり近い制度です。ここでは詳細を省きます。

 

7.経営セーフティ共済を知っておきましょう

この制度は事前に掛金を積み立てておくことによって、取引先が倒産した時に融資が受けられるという制度で、連鎖倒産を防ぐために設けられた制度ですが、掛金額の全額が経費になることから節税策として行われていることが多い制度です。

小規模企業共済ととても似ていますが、全く別の制度と考えたほうがよいです。小規模企業共済は「所得控除」なのに対して、経営セーフティ共済は「経費」です。このため、期間満了により掛け金が全額戻ってくるとき、前者は「退職所得」として処理されますが、後者は「益金(利益)」として処理されます。要するに法人の利益が増えるという事です。

具体的には、毎年20万円を20年間かけ続けた場合、毎年20万円分は経費として節税になっていますが、20年後積立金が戻ってきた場合、法人には400万円利益が計上されるという事です。

この例からもわかるように経営セーフティ共済は節税目的の観点からは「課税の繰り延べ」にしかすぎないです。当期に利益が思わず出過ぎたという時にはとてもいい制度なのですが、保険を解約等してキャッシュを引出すときの出口戦略が戦略的に難しいという側面があるため「加入しましょう」ではなく、「知っておきましょう」というタイトルにしています。

収入に波があって大きな赤字が出る可能性もあるのであれば、強力な節税手段となります

 

8.通勤手当を利用した節税対策

通勤手当は、一定額まで税金がかかりません。

このため役員報酬を考える場合は、受け取りたい手取り額からこの通勤費部分を控除して決定すると節税を図ることができます。

電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合は実費ですが、マイカーや自転車などの交通用具を使用している場合は、片道の通勤に応じて下記のように定められています。

 

方法 距離 非課税となる月額通勤手当
バス等の公共交通機関など

100,000円

自動車等の交通用具など 片道(以下同様)2キロ未満

0円

2キロ以上10キロ未満

4,200円

10キロ以上15キロ未満

7,100円

15キロ以上25キロ未満

12,900円

25キロ以上35キロ未満

18,700円

35キロ以上45キロ未満

24,400円

45キロ以上55キロ未満

28,000円

55キロ以上

31,600円

 

 

次回は最終回、法人成りで得られる節税面でのメリットを紹介します。

 

利木貴志