会社設立のために必ず自分で決めておかなければいけない10のリスト
会社を設立するために、決めておかなければならないことは以下の10個です。
これは自分で会社設立を行う場合でも、専門家に依頼する場合でも変わりません。
株式会社設立を前提として説明します。
No |
項目 |
内容 |
1 | 商号 | 社名のこと。「○○株式会社」や「株式会社○○」「合同会社○○」のように、会社の種類もわかるように正式名称を明示します。 |
2 | 資本金 | 資本金は1円でも大丈夫です。しかし、あまりに少額だと、(法人)銀行口座開設の審査に通らない場合があります。また創業融資を考えている場合は、融資審査の重要項目になりますので注意が必要です。 |
3 | 事業目的 | 実際に行う事業はすべて会社設立時の定款に記載する必要があります。会社は事業目的に書いてある範囲内で活動をすることができますので、将来的に行う予定がある事業はすべて書いておいた方がよいです。 |
4 | 株主構成 | 出資比率(議決権)は会社の重要な意思決定や利益分配に大きく影響します。例えば取締役の解任や定款変更など、重要な決議を行うには発行済み株式の3分の2以上の議決権が必要です。 |
5 | 役員 | 必ず取締役を1名以上置く必要があります。1名の場合はその方が代表取締役になります。監査役は置かなくても大丈夫です。 |
6 | 本店の所在地 | 会社の本店の所在地はできるだけ変更しないで住む場所を所在地にしたほうがよいです。定款変更をしないですむからです。 |
7 | 設立日 | 設立日は変えることができません。また登記申請を受け付ける法務局が休みの日を設立日にすることはできませんので注意が必要です。 |
8 | 決算日 | 決算日は設立後でも自由に変えることができます。消費税の免税期間を最長にするために、設立日の前月末(例えば5/2設立であれば4/30を決算日とする)を設定する方が多いです。 |
9 | 発行可能株式総数 | 無制限に株式を発行できるとしてしまうと、知らぬ間に経営権を握られているということもありえます。どの程度増資する可能性があるかを考えて決めていくといいです。 |
10 | 役員の任期 | 2年(監査役は4年)から10年の範囲内で自由に設定することができます。特別な理由がなければ、10年にする方がよいです。 |
それぞれの項目について以下で捕捉説明します。
- 会社名の決め方
「覚えてもらいやすい、わかりやすい、聞き取りやすい」これが大事です。
聞いてすぐに覚えられる社名のほうが、あなたの商品を利用して感動したお客様からの口コミが発生しやすくなります。「あの商品いいんだよ。えっと…あの会社名なんだっけ…」というのでは売上の機会損失が生じてしまいます。
商品名、ブランド名、事業内容をそのまま会社名にするのも一つの方法です。
注意点としては、知名度の高い会社と同じ名前(例えばトヨタやソフトバンクなど)は、「不正競争防止法」により認められません。また他社が商標登録しているものも「商標法」により認められません。
- 資本金の決め方
業種にもよりますが、目安として半年間会社を運営しているだけの資本金がよいと思います。
具体的には300万円~1000万円未満が理想です。
資本金は会社がビジネスを進めていくために必要な「財産」です。この資本金から、会社の運営に必要なオフィスや倉庫などの不動産契約、パソコンや机などの事務用品、さらに従業員の給料や家賃といった運転資金を捻出することになります。
しばらく売上がなくてもこれらの支出を賄える金額にしておかないと、資金が必要になる都度、社長が個人の貯金を会社に入れることになります。このような状態の決算書は見栄えの悪いものになりますし、税務調査や追加融資の時にいい印象を与えません。なによりも社長自身、会社の財政状態及び経営成績の把握がどんぶり勘定になってしまい、真に改善しようというチャンスを逃すことになります。
- 事業目的の決め方
事業目的の数は10種類以内が望ましいです。
事業目的を追加するときは登録免許税が3万円かかります。
後で書き直す必要がないように「そのうちやりたい。やるつもり」と思うものはなんでも入れておいたほうがよいというアドバイスをされたことがあるかもしれません。載せても必ずそれをやらなければならないわけではないので間違ったアドバイスではありません。
ただ、融資を考えている場合は注意が必要です。あまりに事業目的を詰め込み過ぎて「何をやりたい会社なのか?」と思われると審査に不利です。やりたいことがあって、そのために必要なものが明確で、手元の資金で足りないのでその差額分を借してもらうというのが融資ですから、何がしたいかわからない会社だと、貸し手の金融機関が積極的に融資を進めようと思わない可能性が高いからです。
また事業目的が不明な場合には、不動産の賃貸借契約を断られることもあります。
このため、事業目的は10種類以内ぐらいに絞った方がよいと思います。
- 株主構成の決め方
ご自身で株式を最低50%超保有できるように株主構成を決めましょう。
どうしてかと言うと、ご自身で50%超保有していないと、会社を乗っ取られるリスクがあるからです。代表取締役として会社の全責任を負う立場であったとしても、持株比率が50%未満であれば、自分の意思とは無関係に代表取締役を解任させれるということもあり得ます。
資本金に相当する現金が足りないなど、様々な理由で複数の方に出資をお願いすることはよくあります。ただ出資者(株主)が複数いたとしても、あなたが大株主でさえあれば経営に口出しされる心配はありません。逆に持株0の代表取締役は、いつ会社から放り出されるかわからないので気をつける必要があります。
- 役員構成の決め方
代表取締役を誰にするか、取締役を誰にするかを決める必要があります。監査役や会計参与はいなくても構いません。
会社の従業員はまずは自分しかいないという場合は、ご自身が取締役であり、代表取締役になるしかありませんので、迷わなくて済みます。
- 所在地の決め方
株式会社を設立する場合には、定款上本店の「所在地」を定める必要があります。
「所在地」は「最小行政区画」の記載で構いませんので、できるだけ最小にしたほうが後々オフィスを引越しするような場合でも、定款を変更せずに済みます。
例えば定款の記載は下記の①よりも②の方がよいです。
① 当会社は、本店を札幌市中央区南9条西5丁目1-15に置く
② 当会社は、本店を札幌市に置く
※登記に記載されるのは本店の「所在場所」です。こちらは具体的な所在地なので上記の①の書き方になります。
- 設立日の決め方
設立日は法務局に登記を申請した日になります。
このため法務局が休みの土日祝日や年末年始は設立日にできません(受理されないからです)。
また登記申請書類を郵送で行う場合は、書類が法務局に到着した日となりますので注意が必要です。
設立日は一度決めると後で変更できませんのでよく考えて決める必要があります。
- 決算月の決め方
消費税の免税期間を最長にするために、「会社設立日の前月」を決算月にすることをお勧めします。
例えば1月に設立したら12月にします。
また設立を急いでいない場合は、1年間で最も利益が出る月の前月を決算月にすることをお勧めします。
例えば夏の7~8月に最も利益が出るのであれば、6月にします。これにより様々な節税対策を打ちやすくなります。
- 発行可能株式総数の決め方
「発行可能株式総数」と「発行済株式総数」を明確にわけて考える必要があります。
「発行可能株式総数」は会社が発行することができる株式の上限数です。
「発行済株式総数」は会社が実際に発行した株式の事で、資本金の額と1株当たり発行金額が決まれば自動的に決まります。例えば資本金300万円の時に、1株の金額が1万円であれば300株、5万円であれば60株となります。
「発行可能株式総数」は自由に決められますが、あまり大きくしておくと知らない間に経営権を握られてしまうといったようなことも理論上あり得ます。したがって将来どの程度資金調達する可能性があるかを考えて決める必要があります。
- 役員の任期の決め方
取締役がご自身一人の場合は、手続簡便化のために任期は10年が良いです。役員の任期は2年~10年の範囲で自由に設定することができますが、任期を満了すると継続するか、辞任するかのいずれであっても法務局で手続を行う必要があるからです。このときにかかる費用は1回につき1万円なので任期を長くしておく方が登記費用の節約につながります。
自分で会社を設立する場合は、さらに必要となる6つの作業
こちらも株式会社設立を前提としています。
- 定款の作成
- 公証役場で定款の認証
- 登記書類の作成
- 法務局で登記
- 税務署や都道府県へ開業届け出
- 青色申告の申請
これらはインターネットで調べれば色々と出てきますので、詳細は割愛します。
「自分で設立した方が、会社設立の実感がわくから自分でやる」という方もいらっしゃると思いますが、①調べるのに時間がかかる②ミスが多くなる③電子定款の関係で費用が4万円程度多くかかるといったことがあるため、設立業務は専門家に任せる方が多いという感じがします。
次回は、会社設立に関するQ&Aとして、会社設立に関する疑問について何回かに渡って紹介していきます。
利木貴志
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