会社設立に関するQ&A
資本金に関する疑問
資本金を決めるポイントは何か?
融資等を考えると、資本金は大きいほうがよいです。
とは言っても、会社設立時は1000万円未満にしてください(「以下」ではなく「未満」)。
これには理由が2つあります。
1つ目は「消費税」です。
会社を設立して(もしくは個人事業主として起業して)2年間は原則として消費税がかからないのですが、
資本金が1000万円以上の場合は例外として消費税の納税義務が免除されないことになるからです。
仮に売上が1年間で500万円だった場合、その中に消費税は37万円ほど含まれていますから、経費がないと極端に考えた場合その37万円を納税することになります。
2年間では最大74万円のさらなる支出になるわけです。
2つ目は「住民税」です。
住民税と言っても、その内訳はさらに細分化されるのですが、その中に「均等割り」というものがあります。
この住民税の均等割りですが、資本金が1000万円以下の場合は7万円、1000万円を超えると18万円となるからです(北海道の場合)。
差額は11万円ですから、2年間で22万円のさらなる支出になるわけです。
資本金は少なすぎてもよくありませんが、多すぎてもよくありません。金額だけが要注意です。
本店所在地に関する疑問
自宅を本店にした場合のメリットとデメリットは何か?
既に個人事業主として在宅でビジネスをしてきて、法人化にあたり自宅を「本店」とすることがあると思います。
ただし、自宅が持ち家であればいいのですが、賃貸の場合は注意が必要です。賃貸の場合、賃貸借契約上「法人には貸さない」と明記されている場合があるからです。
これは貸主側から見て、賃貸の目的が居住用か事業用で、消費税の取り扱いが変わってくることが大きいのかなと思います。
いきなり消費税がかかると言われたらびっくりしますよね。
以下は自宅を本店にした場合のメリットとデメリットです。
メリット | デメリット |
初期投資が抑えられる | 本店所在地と社長の住所地が同じ出ることが登記簿からわかるため、取引先に小規模な会社と思われる |
事業所を移転しても、本店移転の登記をする必要がない | 自宅が単に登記簿上の本店であればよいが、自治体から融資を受ける等、事業活動の一部が行われていると判断される状況では、住民税の均等割りが、本店所在地と事業所の2か所分納める必要がある |
自宅のある市や区から融資を受けたい場合は、本店の自宅の方がよい | 税務調査では調査官が確認のために、ごくまれに本店である自宅を訪問することがある |
家賃の一部を会社が負担することが可能 |
特にデメリットの2つめ、住民税の均等割りについて説明します。
例えば札幌市北区の自宅を本店所在地として会社設立登記を行い、その後、札幌市中央区に事務所を新しく借りた場合を考えてみます。
本来であれば本店の住所が変わったので、本店移転の登記を行うことになります。
しかし登記に3万円の登録免許税がかかるので、もったいないと考えて本店は自宅のままで、新しく事業所を開設することが多いと思います。
この場合均等割りは区ごとにかかるので、札幌市の市民税(均等割り)5万円が北区と中央区の2か所分、10万円を納める必要があります。
もっとも、本当に自宅である本店所在地は住居としてしか使用していないのであれば、北区の自宅の均等割りは必要なく、中央区の分の5万円で済みます。
しかし「自宅は事業として使っていないので、自宅分の住民税均等割は払っていません」と聞いていたところ、会計処理を見ると節税のために会社から家賃を払っていることがあります。
部分部分でみると正しいのですが、全体で見るとストーリーが矛盾してしまっている事があります。
1年で5万円の納税を失念しているので、税務調査で3年間分指摘を受けると最低15万円分の追加納税が発生します(そのほか延滞税等の加算税が加わります)。これについては知識があやふやな専門家もいますので注が必要です。
自宅を事業所としているが、登記だけを違う住所にできるのか?
バーチャルオフィスなどを会社登記のために借りようと考える方もいらっしゃると思いますが、登記は可能です。
月々数千円単位で借りられ、入居状況が厳しくないので、初期投資が抑えられるというメリットがあります。
ただし2つ注意点があります。
一つは労災保険に加入できない場合があります。
労災保険に新規加入する際の住所は、実際に従業員がいる住所になります。
バーチャルオフィスでは実際にはそこで従業員が働いているわけではないので、そこがネックとなり加入できないケースもあります。
二つ目は銀行口座の開設ができない場合があります。
ゆうちょぎんこうや都市銀行では、警察庁からの通達で恐らく開設できないと思います。
会社の本店を移転する場合の登記費用はいくらか?
法務局管轄内と管轄外で変わります。管轄外へ移転する場合には新しい管轄法務局と旧管轄法務局の分で2倍の金額がかかってしまいます。
同一の法務局管轄内…登録免許税3万円
法務局管轄外に移転…登録免許税6万円
この他に専門家にお願いすると、手数料として3万円程度かかるようです。
次回は、会社設立に関するQ&A~役員報酬に関する疑問、法人成りに関する疑問を紹介します。
利木貴志
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